口腔内の病原因子を調べれば歯周病対策が進むかも?
— 歯の健康をもっと、ずっと。 —
私たちはこの想いをもとに創業当時から現在まで、
みなさんの歯の健康を支え続けるために
様々な学術機関や第三者機関と一体となって実証実験を行っています。
現在までに、12の大学と共同研究を実施し、
68件の学会で論文を発表してきました。(2017年9月末現在)
歯ブラシの力で少しずつでも口内環境を改善するために、
今日も私たちは検証と実験を繰り返します。
今回は、神奈川歯科大学の協力のもと
ソラデーシリーズが歯周病菌に有効か検証しました。
神奈川歯科大学歯学部歯学科[口腔科学講座 微生物感染学分野]
ソラデーシリーズに搭載されているソーラーパネル付き「TiO2(酸化チタン)」は、歯周病菌にも有効か?
ソラデーシリーズの特徴は、ソーラーパネルによって微量の電気を発生させ、TiO2(酸化チタン)半導体に流すことで「マイナス電子(e–)」を発生させること。このTiO2(酸化チタン)から発生した「マイナス電子(e–)」は口腔内の細菌や歯垢(またはプラーク)に作用することでそれらを効率的に分解除去し、細菌の増殖を抑えることができる独自の特許技術です。
今回の実験では、ソーラーパネルの大型化によって、TiO2(酸化チタン)半導体の効果にどのような変化が出るのかを歯周病の原因となる「歯周病菌」の生育状態から検証します。歯周病対策では、原因と考えられる「歯周病菌」を増やさない、そしてできるだけ口腔内に留めないことが有効だと考えられています。ソラデーのソーラーパネルの大型化は、歯周病の原因となる「歯周病菌」に対しても効果があるのでしょうか。
まだ解明されていないことが多い歯周病の原因
歯周病は、特定の細菌の感染によって引き起こされる炎症性疾患で、「歯周病菌=病原細菌」が口腔内(特に歯周ポケット※)に定着しやすく、増殖することで炎症は悪化します。しかし、その原因がどこにあるのか、どうすれば増殖を抑え、減少させることができるのか、まだまだ解明できない点が多く、日進月歩の研究が進められています。
今回の検証を行った神奈川歯科大学の大学院歯学研究科・口腔科学講座のチームは、微生物感染学分野の教授、浜田 信城 博士を中心に研究を行っています。歯周病の原因となる歯周病菌は、歯と歯茎への影響はもちろん、全身疾患への影響も大きいため、さまざまな角度から研究を行っています。
※歯と歯茎に間に出来る隙間の事。
検証 ソーラーパネルの大型化は、細菌や微生物の抑制に影響を与えるか?
今回の検証は、ソーラーパネルのサイズを変えることで「TiO2(酸化チタン)」に流れる微弱電流を変化させ、その違いによって歯周病菌から作ったバイオフィルムに変化が出るかを測定しました。まだ原因や予防法が解明されていない部分も多い歯周病に対して、こうした基礎実験は着実な成果を上げています。
検証の結果、歯周病菌からのバイオフィルムは、ソーラーパネルの大型化による大幅な変化が認められました。光を遮ったソーラーパネルを基準に、通常サイズのソーラーパネルではバイオフィルム除去に一定の効果が認められ、2倍に大型化したソーラーパネルの場合は電流量が増加して、さらに顕著な除去効果が認められます。
「TiO2(酸化チタン)」に微弱電流を流して「マイナス電子(e–)」を発生させる光触媒技術は、薬品などを用いずにバイオフィルムなどを分解するため、歯周病の病原因子である「歯周病菌」の減少にも有効であると考えられます。
実験方法
歯周病の原因となる「歯周病菌」のバイオフィルムをプラスチック製のプレート内に形成後、プレート内を生理食塩水で満たし、検証環境を暗幕で覆います。外光が入らない状態で、同一の光源(蛍光灯)から7cmの距離に「光を遮ったソーラーパネル」「通常のソーラーパネル」「2倍サイズのソーラーパネル」の3種類を設置。それぞれのソーラーパネルに接続した「TiO2(酸化チタン)」を生理食塩水に入れ、サイズの違いによる微弱電流の差が与える、歯周病菌のバイオフィルム変化を検証した。
ソラデーとの出会い
私がシケン社のソラデーに出会ったのは、前任の教授から紹介されたことがきっかけでした。正直、最初はソーラーパネルから電気を流す酸化チタンの「光触媒技術」に対して懐疑的な部分もありました。私の専門は細菌や微生物の研究ですから、まだ解明されていないことの方が多いわけです。しかし、ソーラーパネル付きの酸化チタンを用いて様々な基礎実験を繰り返すうちに、プラーク細菌に対して一定の効果が認められることがわかってきました。プラークに対して効果があるということは、歯の表面のミュータンス菌などを減らしてくれるわけですから虫歯にも有効性が認められるということです。では、歯周病の原因と考えられている「レッドコンプレックス」と呼ばれる「歯周病との関連性が高い3菌種」に対する効果はどうなのか?そのような考えから、今回の検証に至りました。
虫歯と歯周病の違い
日本人の二大口腔疾患とも言える虫歯と歯周病。この二つには大きな違いがあります。原因はどちらも口腔内の細菌や微生物の集まりであるプラークにあるわけですが、虫歯の原因となるミュータンス菌は酸素の有無に関係なく生息し、歯の表面に付着します。ミュータンス菌から作られる酸によってエナメル質が溶けることで痛みなどを伴い、歯科医院へ治療に行くきっかけが生まれます。
しかし、歯周病の原因と考えられている歯周病菌の多くは酸素を嫌い、酸素のない環境である歯と歯茎の隙間に生息し、なかなか取り除くことが難しいのです。すると歯茎が炎症を起こし、やがて歯を支える骨(歯槽骨)まで溶かしてしまいます。これが歯槽膿漏と呼ばれる状態なのです。ですから、歯周病に対してはまず原因菌=歯周病菌を増やさない、そして、増えたらどのように減らすかが大切になるわけです。そのためには一体どうすれば良いのか、その原因の探求と予防のきっかけとなるのが、今回のような基礎実験なのです。
新たな発見に出会う喜び
私たちは現在6人のメンバーを中心に、院生なども含めてチームで研究をしています。研究そのものは個人のテーマに取り組む孤独な戦いですが、それぞれ様々なテーマを取り上げ、共有することで、新しい発見や意外な気づきに出会うことも多いのです。
例えば私たちが研究しているテーマの一つに「動物の歯周病原菌」があります。主に犬を対象に研究を進めてわかったことは、犬には人間とは種類の違う原因菌がいて、飼い犬に口元を舐められるなどの濃密な接触によってその菌が人間にも伝播してしまうこと。さらに、その菌が口腔内に定着しやすい人と、しにくい人がいることなどなどもわかってきました。人間の体は口を通して様々なものが体全体に運ばれていくため、口腔環境が原因で全身疾患へと発展する可能性も極めて高いのです。こうした研究によって新しい発見が生まれ、基礎実験を重ねることで口腔環境の改善に役立つことが、私たち研究者の使命だと考えています。