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デザインの職人が明かすSOLADEY N4の秘密

歯ブラシの職人たち

“自分を磨ける歯ブラシ”をテーマに生まれたSOLADEY N4。その一本には、さまざまな職人の技術と経験と思いが注がれている。今回登場するのは、株式会社シケン開発部担当の遠藤歓一(以下、遠藤)と株式会社ハニカムスタジオのプロダクトデザイナー、小薗大輔氏(以下、小薗)。「これまでのイメージを一新するものを」という思いで始まったN4のデザインについて、2人の職人に語ってもらった。

遠藤歓一

この人と一緒にものを作っていきたい。もう直感で決まりました。

- SOLADEY N4の開発にあたっては、
プロダクトデザインの会社を何件か検討したと聞いています。
ハニカムスタジオさんに決めたきっかけはなんでしょうか?

遠藤
なんと言いますか、若さです。

小薗:
若さですか(笑)。

遠藤
いやいや(笑)、理由がちゃんとあるんです。N4を開発するにあたっては、これまでのイメージを一新することが一つのテーマになっていました。ですから、若い感覚で作ってくれる方を探していたんです。もちろん、デザインだけではなく、内側の構造も考慮していただける方がいいとか、色々と条件もあったんですよ。でも最初にお会いした2013年の6月に、最初から「ええな」と。ぜひ一緒にものを作っていきたいなと。もう直感で決まりました。

小薗大輔氏

長いあいだ使っても、飽きないものを作りたかった。

- SOLADEY N4のデザイン上のコンセプトを伺えますか?

小薗:
一言で言うと、シンプルなデザインにするということです。特にこの歯ブラシは、一度買っていただいたらブラシを交換しながら長く使うものなので。新しさを狙って奇をてらうこともできますが、そういうデザインは一過性のものになりがちです。長いあいだ使っても飽きないものにするためには、シンプルなデザインにすることが重要だと思っていました。

遠藤
デザインに関しては、代表の八田もいろいろと意見があったのですが、それも今振り返ってまとめてみれば「すっきりした、飽きのこないデザイン」ということでしたね。でもこちらはそれをどう言えばいいものか分からなくて…。
本来なら私の口から伝えなくちゃいけないんですが、煮詰まってくると「社長、もうご自分で電話してください」みたいなことになってね(笑)。

小薗:
やり取りを重ねる中で、だんだんとシケンさんの好みというか、言いたいことも分かってきました。結果的には同じ方向を向いてたわけで、よかったですよね。

幻の一押しデザインがあったんです(笑)。

幻の一押しデザインがあったんです(笑)。

- これは実施に至らなかったけれど、
惜しいアイデアだったなあと思うものはありますか?

遠藤
実は幻のイチオシデザインがあったんです(笑)。
今あるN4は樹脂製なんですが、当初はステンレス製の鋳造部品をプラスチックと組み合わせることを考えていたんですよ。

小薗:
前のSOLADEY-3のイメージもありましたし、通電させないといけないですし。今のN4にはカーボンという電気を通す素材が使われているんですが(N4の黒いライン部分)、初めはその存在を知らなかったんです。それで、ステンレス案をいくつか出していた中で、ほぼ決まりかけていたものはありました。

遠藤
ところが、工場に持っていったところ、これは今の技術では目指しているものは実現できないと言われてしまったんです。つまり、必要な構造を中にいれてステンレスで鋳造すると、どうしても外側のラインに微妙に響いてしまうらしいんですね。色々と工場を探したり、鋳造法の勉強をしたりしましたが…結論は変わりませんでした。行き詰まっていたときにカーボンの存在を知って、そこからはコストの問題もあり、樹脂製に方向転換をすることになったんですが。

1ミリ違うだけで、持ったときの感じが全然違うんです。

1ミリ違うだけで、持ったときの感じが全然違うんです。

- 一番苦労されたのはどんなことですか?

小薗:
歯ブラシとして適切なサイズにすると、機能的に入れたい構造が入りづらかったことですね。内部の設計をしてくれたのは別の会社の設計士の方なんですが、その人と3時間くらいskypeでやりとりをしあったこともありました。お互いに「これなら入るんじゃない?」って図を書いては見せ合うんです(笑)。

遠藤
やっぱり、技術的な問題ではいろいろと苦労しましたね。最初にもらった設計図では、こちらで希望するのより一回り太く、長かったんです。

小薗:
とはいえ歯ブラシですから、極端に太かったり長かったりすると持ちづらい。1ミリ違うだけで、持った感触がまったく違ってしまいます。なるべく多くの人に使ってもらうためには、サイズ感は譲れないところでした。その辺は、本当に設計士の方に頑張っていただきました。

遠藤歓一

デザインが、正しい磨き方を導くわけです。

小薗:
もう一つ苦労したのは、普通に握るとせっかく大きくしたソーラーパネルが隠れてしまうということです。お尻のところを持ってもらうなど、色々と考えてはいましたが、うまく答えが出ませんでした。

遠藤
実際、歯ブラシのお尻のところを持って、軽く磨くという磨き方を提唱されている先生もいるんですよ。でもなかなかしっくりこなくて。

小薗:
それで、歯ブラシの持ち方を自分で調べたりシケンさんと相談していくうちに、ペングリップという握り方が全てを解決するのでは?ということに行き着きました。この持ち方であればソーラーパネルが隠れないんです。ペンを持つように握ることでソーラーパネルを隠すことなく通電部に触れて、その上、歯や歯茎を傷めず細やかに磨ける。これだ!と思いましたね。通電部のカタチを工夫することでペングリップへ導くわけです。ある種のアフォーダンスとなるデザインを目指しました。

遠藤
素人なもんで、初めは、「アフォ…何?」みたいな(笑)。小薗さんに、「特定の行為を導くようなデザインのことです」と説明していただいて、それで納得しました。しばらくは社内でアフォーダンスという言葉が流行りましたね(笑)。なるほど、こういう答えの出し方があるのかと思いました。

小薗:
ペングリップを追及することで、ソーラーパネルという特徴を生かしつつ、より良い磨き方が両立できるデザインになりましたね。

だれも注目しませんが(笑)、実は高度な技術なんです。

だれも注目しませんが(笑)、実は高度な技術なんです。

- 最後に、N4が完成した今、一番気に入っているところはどんなところですか?

遠藤
私はロゴ部分(ソーラーパネルの窓部分)ですね。これ、内側に凹凸をつけているんです。この手があったか!と思いました。しかも、はめ込んであるわけじゃなく一体成型なんですよ。つまり、ロゴの入った透明な部品を先に作って、それを本体の型に置いて、最後に本体用の樹脂を流し込む。これはだれも注目しませんが(笑)、実は高度な技術なんです。

小薗:
これまでのSOLADEYは、印刷でロゴを入れていたんです。でも、水に濡れているうちにどうしても落ちてしまう。お客さんが次に買い換えたいなと思ったときに、ブランド名が消えて分からなくなっていることは問題なんですよね。かと言って、表面に凹凸をつけると汚れが溜まって不衛生になりがちです。それで、内側につけたんですが…
遠藤さんに喜んでもらえてよかったです(笑)。個人的には、防水かつソーラーで、歯ブラシで…と初めて尽くしの案件でしたから、色々と勉強できました。それが一番よかったですね。

仕事に欠かせないアイテム

実際のデザイン作業に移る前に、iPadでスケッチを行うことも多いとか。

いつもスッキリなデスク。シンプル is ベスト!

株式会社シケン 開発部係長 遠藤歓一

遠藤歓一

入社14年目。開発の他、品管、知財、製造にも携わる。嫁と一緒に、3歳と0歳の息子の子育て格闘中。

株式会社ハニカムスタジオ 小薗大輔

小薗大輔氏

医療・産業・日用品と、多方面の製品分野にデザイナーとして参画。プロダクトデザインを中心に、ブランディングに関わるCIやVIの構築も行っている。

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