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試合の結果を左右する!?歯の健康とスポーツの関係

新入社員 清石健の歯磨き探訪
清石健

清石健(きよいしけん)と申します!
株式会社シケンにこの春入社した新入社員です。
私は自分の歯に自信がなく、歯を見せて笑えないので表情が硬いとよく言われます。そんな自分を変えるために歯と口の健康に関する専門家のもとを訪れる「歯磨き探訪」を担当することになりました。憧れのブラッド・ピットの笑顔目指して精進して参ります!

いすず前社長

健くん、今日のミッションはこれよ!!

本日のミッション

本日のミッション嚙み合わせが、試合の結果を左右する!?
歯の健康とスポーツの関係。

「スポーツ歯学」を知っていますか?スポーツを行うことで起こる歯や口周りの外傷(けが)の予防だけでなく、スポーツの競技能力を向上させるためのサポートを行う、歯科の分野のことをスポーツ歯学と言います。今回は、このスポーツ歯学について、お話しを伺ってきました。

健くん、よろしくネ!

清石健

はい!行ってきまーす。

お話をうかがったのは・・・

日本スポーツ歯科医学会認定医 武田 友孝先生

武田 友孝先生

「歯が健康だと、パフォーマンスが上がります」
国内でスポーツ歯学があまり進んでいなかった90年代から、歯の噛み合わせとスポーツの関係の研究を始めた第一人者。その功績が認められ、1997年からJOC(日本オリンピック員会)強化スタッフ・スポーツドクターを務めている。

健

先生は、スポーツ歯学がご専門とのことですが、この分野の研究を始められたきっかけは何だったのですか。

武田先生

僕自身、学生時代にラグビーをやってたのですが、当時はマウスピースなんて使っていませんでした。本当によくケガしなかったと思いますが、海外の話を聞くとどうやらマウスピースというものがあった方が良さそうだと。当時スポーツ歯科に興味を示していたのが、私しかいなかったので、それでやってみようと思ったのがきっかけです。

健

先生はラグビーをやられていたんですね!ちなみに歴史的には、スポーツ歯学はどのように始まったのですか。

武田先生

日本では90年代にスポーツ歯学医学会が出来ていますが、アメリカではその6〜7年前から学会が始まっています。文献をあたってみるとスポーツ歯学は、ボクシングでマウスピースを使用したのが、その始まりだとされています。

武田 友孝先生

マウスピースがしっかり歯を守ってくれないと、ボクシングの試合自体ができなくなってしまいますもんね。

武田先生

マウスピースをしっかり噛み締めることで歯を保護するという効果がありますが、スポーツ歯学の見解では、マウスピースを使用することによって、脳震盪が起きるのが軽減されると言われています。ボクシングなどでは、横から殴られると脳震盪を起こしやすく、これはヘルメットを被っていても防ぐことはできません。でもマウスピースを噛むと咬筋という首の筋肉に力が入って固くなり、首が安定します。脳震盪は頭を殴られた時に、頭蓋骨の中で脳が殴られた方向とは逆に揺れることで起きると言われています。また、揺れが非常に激しい場合、脳の血管が切れてしまったり、脳挫傷が起きてしまうことにもつながります。マウスピースをしっかりと噛み締め、首が安定することで頭の揺れを抑えられ、脳震盪などを防ぐことができるのではないかと、言われているのです。

マウスピース
健

本当だ。歯をぐっと噛み締めると、首の筋肉に力が入りますね。脳震盪を軽減する他に、噛み締めることとスポーツの関係について、もっと教えてください。

武田先生

実は歯を噛み締めることで、筋力が4~6%程度アップすると言われています。データで見ると少ないように思えますが、トップアスリートともなると1%上げることも大変です。ほとんどの競技で言えることですが、筋力が上がった方が良いんです。例えばラグビーの五郎丸選手。あの独特のポーズを取ってからボールを蹴っていますよね。蹴るや走るなどの動的な動きに移る前に、構えるという静的な動きを取るのですが、その時にキチンと歯を噛み締めていると、姿勢が安定するのです。

あの独特のポーズの時に、歯を食いしばっていたんですね。

武田先生

その他にも、例えば陸上の100mでも同じことが言えます。それまで陸上競技では歯の噛み締めとパフォーマンスには関係性はないとされてきましたが、研究を進めていくにつれ、スタートダッシュ時に歯をぐっと噛むことが重要であるということが分かってきました。ただ、一度スピードに乗ってしまえば、今度はリラックスして走った方が良いので、歯を噛み締める必要はありませんが、臨機応変に噛む噛まないを使い分けるといいですね。

ジャマイカ代表のウサイン・ボルト選手は口を開けながら走っているイメージがあったので、意外です。

武田先生

スポーツを行う際の「噛み締め」には、上下左右合わせて8本の奥歯が大事だと言われています。この4本に均等に力が入らないと、キチンと噛み締められなくて、筋力が発揮できなくなってしまいます。一番磨きづらい歯が、キチンとした噛み締めには一番大事なんですね。

武田 友孝先生

それはしっかり磨かなくっちゃ。この他にもスポーツに活かせる「噛むことの効能」はありますか。

武田先生

歯を強く噛めば噛むほど、運動機能を司る脳の運動野の動きが活発になります。さらに認知機能を司る前頭前野の血流も上がるため、試合中の判断力にも大きく影響します。サッカーの試合でも、ガムを噛みながらプレーしてる選手を見かけますよね。あれにも、意味があるんですよ。

ガムを噛みながらプレーすることには、そんな意味があったんですね。そういえばリオオリンピックでは日本人選手が大活躍しましたが、スポーツ歯学はオリンピックにも関わっているのですか。

武田先生

僕が知る限りでは、シドニーオリンピックから診療室でマウスピースが支給されるようになったと言われています。

シドニーオリンピックということは2000年!意外と最近なんですね。実はマウスピースを実際に見たことがないんですが、どんなものなんですか。

武田先生

そう思って、持ってきましたよ!マウスピースというのは、前歯を保護するだけでなく上下の歯がちゃんと噛み合わせるようにするものなのです。だから、キチンと歯型を取って作ったものを使用すると、歯に大きな力が加わった時でも、歯がきちんと噛み合うことで、衝撃が歯の全体に分散されます。手前味噌ですが、僕が作ったマウスピースはすごいですよ〜。一番衝撃を受けやすい前歯の部分に硬めのプラスティックを入れ、かつ歯とマウスピースの間に0.5~1mm程度のスペースが空いているんです。こうすることで、歯に衝撃を受けても、力が分散されるだけでなく歯に直接ぶつからないんですよね。それまではラグビーでマウスピースを使用しても、前歯を折ったりケガをする人は年に数人いました。でもこれを使用することで、ケガをする人はぐっと少なくなっています。

マウスピース

そんなすごい効果があるなんて、普段運動しない僕も、使ってみたくなります!ところで、オリンピック選手には、歯の健康についてどのような指導がされているのですか。

武田先生

オリンピックの選手団には、栄養士がチームなどに入るので、栄養だけでなく歯の健康も保つように指導されます。歯を痛めてしまうと、柔らかい食事つまり軟食ばかり摂るようになってしまいますよね。そういう食事は炭水化物が多くなりがちで、タンパク質、ビタミン、ミネラルなどの栄養が不足してしまうので、試合当日のパフォーマンスにも影響してしまうんです。この他にも、オリンピックなどで遠征すると、飛行機に乗りますよね。この時に、虫歯があると、骨の中やその中の膿の袋が、気圧の変化で膨張・収縮することで、強い痛みを感じてしまうんです。

虫歯があると、飛行機に乗った時に痛むことがあるってことですか!?知らなかった…。

武田先生

遠征先で歯が痛くなってしまうと、試合の結果に影響してしまうので、特にJOC(日本オリンピック委員会)では、選手の健康のコントロールに力を入れています。具体的には、オリンピックのシーズン前と後、そして派遣前に内科と整形外科、そして歯科の受診を義務化しています。

武田 友孝先生

スポーツ歯科の重要性が高まっているんですね。普段選手と一番身近にいるスポーツトレーナーも、歯の健康を指導しているのでしょうか。

武田先生

スポーツトレーナーによっては、キチンと指導してくれる方もいますが、まだまだ普及しきれていないというのが現状です。だから僕は、日本スポーツ歯科医科学会という場で、スポーツトレーナーなどスポーツに関わる人に、歯とスポーツの関係についてお話しています。このような知識を広め、選手の口腔環境を良くしてもらうことで、最終的には運動能力や安全を高めようという動きが、僕の周りだけでなく徐々に広まりつつあります。

そうなると、次の東京オリンピックでは、さらに良い色のメダルが期待できるかもしれませんね!

もっと詳しく!探訪レポート

教えて!武田先生 歯とスポーツの素朴なギモン

一番歯に負担が掛かるスポーツは何ですか?

私が見ていて「これは、歯に負担が掛かりそうだな」と思うスポーツは、ウェイトリフティングですね。だから、ウェイトリフティングの選手でマウスピースを使用している方は少なくないように思います。

スポーツを行う上で、オリンピック選手までのレベルではなくても、マウスピースは作った方が良いですか?

歯を守るという意味でもマウスピースは重要ですが、キチンと歯を噛み締めると、蹴ったり走ったりなど動き出す前の構えの姿勢が安定し、競技のパフォーマンスが上がることもあるので、作ることをおすすめします。

オリンピック選手までのレベルでなくても、歯は健康な方がスポーツの成績は上がるものなのですか。

本数がそろった健康な歯でちゃんと食いしばると、それだけ筋力がアップするので、歯は健康な方が良い成績が出ます。

ゴルフが趣味なのですが、やはり歯を噛み締めると飛距離が上がりますか?

タイミングよく歯を噛み締めることで、飛距離に影響することがあります。実はゴルフ選手でマウスピースをしている人は、少なくないんですよ。

 

本日のまとめ

僕も1つ、マウスピース作ってみたくなりました。武田先生ありがとうございました!

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